AZAPA

AZAPA STORY

ヤマハ発動機様とともに語る共創 開発プロセスのイノベーションで新たな価値を創造する

「開発プロセスのイノベーションで新たな価値を創造する」をテーマに、ヤマハ発動機の方々と当社メンバーによる対談の機会を頂きました。

参加者一覧(敬称略)―――――

大迫正岐 ヤマハ発動機株式会社 PF車両ユニット 電子技術統括部 統括部長

中村倫久 ヤマハ発動機株式会社 PF車両ユニット 電子技術統括部 電子システム開発部 制御技術第2グループ 電子デバイス開発部 設計第1グループ グループリーダー

中川善富 ヤマハ発動機株式会社 PF車両ユニット 電子技術統括部 電子システム開発部 制御技術第2グループ 主査

加藤丈晴 AZAPA株式会社 取締役 第一事業本部長

吉沢明紘 AZAPA株式会社 第一事業本部 第一制御事業部長

正岡広明 AZAPA株式会社 第一事業本部 第二制御事業部長


―ヤマハ発動機様からAZAPAにお声掛けを頂いた、そのきっかけは何だったのでしょうか。

大迫正岐氏(以下、大迫):私たちはモーターサイクルを中心とした電気電子系の生産、先行開発を担当しています。モーターサイクルの製品開発では、20世紀末から2000年代前半にかけて環境対応が強く求められるようになり、電気電子系の部門は以前に比べ業務量が増加してきました。そして近年では、走りの質を良くするといった点でも制御系の担う部分が増えており、部署への期待と共に負担がさらに大きくなりつつあったという背景があります。これまでのやり方をただ続けているだけでは、いつか破綻してしまう。そう漠然とした懸念がある中で、担当役員から「こういう会社があるから一度話を聞いてみないか」と紹介されたのがAZAPAさんでした。仕事のやり方を改善して効率化できるきっかけになるかもしれない。そうして最初にお会いしたのが3〜4年ほど前だったと思います。

加藤丈晴(以下、加藤):私も覚えています。そのときに大迫さんは「会社の体制・組織、プロセス、リソースといったものを、四輪の経験からコンサルしてほしい」とお話しくださいましたね。しかし、その当時のAZAPAには、それらをキッチリ語れるほどの体系ができていませんでした。その時にもし引き受けていたら、悩みながらでないとできなかったかもしれません。

大迫:それからしばらく経って一昨年ぐらいに、懸念していた通りの状況がいよいよ現実化してきました。安心・安全、快適性といった新しい課題。部署の役割がさらに増え、このままでは仕事の複雑化がますます進んで、経験則や人間の頭だけでは収まらなくなってしまう。そこで思い出したのがAZAPAさんでした。それから具体的な相談を進めて、2018年から一緒に仕事をさせて頂くことになりました。

加藤:実は、大迫さんがAZAPAを思い出してくださった頃が、我々も制御開発プロセスを定めた頃でした。以前から制御開発を数多く手掛けていましたが、やはりそこには我流のようなものが出てしまっていました。そこで、会社としてあるべき形を定め、「Control of Things(R)」というKeyWordの下に、あらゆるものを制御することこそAZAPAのコアであり、その為に確りとしたプロセスを決め置いた時でした。大迫さんがAZAPAに期待されたニーズと、我々が提供できる価値がちょうどマッチした、実は凄く良いタイミングだったと思います。

中川善富氏(以下、中川):我々も「開発プロセスが今のままでいいのか」という話をちょうど検討していたタイミングでした。二輪にとっての電子制御は、燃料噴射制御から始まって、2006年に弊社が量産二輪車に世界で初めて電子制御スロットルを積んだぐらいのもので、トラクションコントロールもせいぜい10年程前の話です。そこから気がつけば、2015年にはIMUを搭載し、車体姿勢を3次元で推定するまでになり、急速に内容が複雑化してきました。MBD(モデルベース開発)関係のツールやシミュレーションはフルに使っていますが、ツールを使うだけ、仕事をこなすだけで精一杯になっていました。このままではいけない、開発プロセスを見直さなければならない、というタイミングでマッチできたのだと思います。

加藤:会うべくして会った、運命というところですかね(笑)。

一同:(笑)

正岡広明(以下、正岡):ちょうど良い機会ですから質問させてください。弊社の第一印象はいかがでしたか?

大迫:他とは違う、期待や魅力などをいくつか感じました。ひとつは、すでに色々なところで経験があることです。机上の空論ではない、経験に基づきリアルなことをされていることからくる期待です。二つ目は、失礼な言い方かもしれませんが、御社の規模と比べると、やっている仕事の中身と幅が、私の想像を遥かに超えていたのです。何故こんなことができるのかと聞くと、人材だとお答えになったことを今でも印象深く覚えています。ひとりひとりがプロフェッショナルだから、少ない人数でもこれだけの結果を出せるのだろう。ここにもうひとつ期待しました。そして、一番強く感じた魅力が「Tier0.5(ティア0.5)」です。我々とサプライヤーさんは、お互いに期待する一方で、グレーゾーンというか、どちらもやりたくないところがあるものです。かゆいところに手が届くように、AZAPAさんはそこを上手にやってくれるというので「そんな良い話があるのか」と思ったぐらいです(笑)。

一同:(笑)

中村倫久氏(以下、中村):実務に近い立場からも補足させてください。コンサル会社に仕事を依頼する場合、教科書的な提案が出てくることもあります。その場合、こちらで咀嚼して現場へ落とし込むことが多く発生するため、必要以上に時間がかかることが懸念されます。大迫からAZAPAさんの話を聞くと、コンサル的なことだけでなく、エンジニアリングの話、実践までセットでやってもらえるというから、上手くいけばきっとたくさんのことを学べて、仕事を良くできると大いに期待したのが最初の印象です。


―実際に協業関係を深めるにあたって、今回はどのようなステップで進めていきましたか。

中川:AZAPAさんと仕事をする上で、我々は3つのステップを設定しました。第1ステップは、過去に我々が開発した制御システムから開発テーマを出して、AZAPAさんでもある程度時間をかけて同じようにやっていただく。ただし、あくまでAZAPAさんのやり方でお願いしますと。そうして比較して、お互いの良いところを見つけようというわけです。第2ステップは、発見した良いところを我々のプロセスに組み込みつつ、「AZAPAさんにどこへ入ってもらえば、強みを出してもらえるか?そして我々も嬉しいという落とし所はどこか?」の仮説を立てました。そして第3ステップでは、我々の部門だけで完結できるコンパクトな制御開発で、仮説通りに一度回してみました。我々は新しいプロセスで開発し、AZAPAさんに任せるところは任せる。こうして新プロセスの有効性を検証するという流れです。期間は全体で1年。第3ステップまでお互いに意思疎通を図りながら進め、仮説どおりの嬉しい結果を得られたというのが現時点ですね。

吉沢明紘(以下、吉沢):正直に申しますと、いきなり製品開発にAZAPAのプロセスを適用するというのは、二の足を踏みたい気持ちがありました。ヤマハさんでもMB開発や独自の開発プロセスをお持ちで、二輪と四輪の違いもありますから、弊社でどこまでやれるのかという心配もありました。しかし、ヤマハさんから困り事を挙げて頂いて話していく中で、弊社の開発プロセスがお役立てできる手応えを感じられました。弊社のプロセスは、制御開発そのものを深く紐解くことで、「設計者の思いを残す技術のアセット化」、「網羅的な制御設計・テストによる品質確保」、「無駄を省き、成果物を上手く活用することによる開発効率化」を実現するべく定義していますが、ヤマハさんがこれから直面する、制御の複雑化、大規模化、そしてそれに伴う開発工数の増大という課題の解決にピッタリだと感じたのです。こちらにとっても良い経験になったとありがたく思います。


―協業には目指す先、「ものづくりの理想像」が共感できていないと難しいと思います。それぞれどういう理想像を描いていますか?

加藤:まず、価値の設計をどうやっていくかが大切です。価値には「機能的価値」と「意味的価値」の2種類があると考えています。まず「機能的価値」は、分かりやすく表現すればスペック追求型。ひたすらハイスペックにしていくという価値です。一方の「意味的価値」は、製品やサービスを受け取ったエンドユーザーの生活が豊かに変わるもの。例えばiPhoneは私たちの生活を激変させました。この「意味的価値」をどうやって決めていくかがとても重要です。

大迫:同感です。価値というものを追求しなければ、我々の会社は存在意義がないと思っています。ヤマハ発動機の企業理念には「感動創造」という言葉があり、ブランドスローガン「Revs your Heart(レヴズ ユア ハート)」は人をワクワクさせること。どちらも感動につながる言葉です。乗り物を単なる移動手段としてだけではなく、ヤマハを選んでくださったお客様が「ヤマハを買って良かった」と感じていただけるように。価値を考え、追求して、技術でどう訴えるかが私たちの仕事です。

加藤:価値を上位の要求として、その実現を目指したメカやエレキ(ECUハードと制御)の設計では、設計者が仕様に込めたい意思を文書として残すことが必要だと思います。最近は「Simulinkのモデルが動く制御仕様書だ」という企業が増えていますが、我々はそれに断固として反対の立場を取ります。それでは設計した人間にしか差分が分からない。要求分析と構造設計も体系建てて進めていく必要があり、それを我々はUSDM(要求仕様記述手法)、DFD(データフローダイアグラム)、決定表などを使って表現しています。手段はともかくも、体系をプロセスとして資産化していけば、後の派生開発できっと生きてきます。また、今まで開発したアセットを、使用性や保守性を担保しながら応用・活用しやすい状態にすることで、以降の設計をかなり効率化することができるはずです。

大迫:そうしたワザの部分が頼もしいですね。我々は制御系の仕事が増えたことでAZAPAさんと協業するきっかけになりましたが、仕事が増えたこと自体は、むしろ嬉しいことです。なにせ二輪開発における電子制御技術の導入当初は、キャブレターからフューエルインジェクションへの切り替わりが顕著な例ですが、機能はそのままに機械から電気に置き換わっただけのものが大半でした。それが今や、ヤマハ製品で感動していただくために、ヤマハらしさを考えながら電子制御スロットル、オートクラッチの制御システムなど、私たちの制御技術開発で貢献できる。ようやくそういう時代が来たかと嬉しく感じています。しかしながら、商品の狙いを具現化するためのQFD(品質機能展開)で出てきた結果と、QCD(品質コスト納期)をしっかりと両立させる必要がある。どれだけ想いがあっても、実現するためのワザを進化させないと、理想的なモノづくりはできない時代になってもいる。だからそのワザの部分で助けて頂けると非常にありがたいです。スタート時から期待していた通りの結果になりました。

中村:今回の活動で嬉しかったことのひとつに、部署スタッフの手応えもありました。活動の第3ステップでは、彼らにも普段の開発ではやらないことをやってもらい、二重のパワーと工数を使っています。しかしそれでも「AZAPAさんとこういう活動してどうだった?」と聞くと「非常に良かった」と答えたのです。やらされ感がなく、自分たちの問題意識を解決できる良い活動だったと自信を持てたようで、手応えを感じながら1年を過ごせたことが成功体験になって、将来にも良いスパイラルを生んでくれると思います。


―AZAPA側はヤマハ発動機様との協業で何を得られましたか?

吉沢:とてもたくさんのことを得られました。特に具体的な運用時において、USDMの書き方だったり、帳票類だったりで、ヤマハさん側が今回の活動で取り組んで困ってしまったことは、弊社のプロセスにおける改善すべき点です。今回は反応を見ながら作っていき、伝えて、取り組んで頂いてと、やりとりをしながらブラッシュアップすることができました。ヤマハさんとの取り組みは、弊社の中でも今後のスタンダードになっていくものです。良い事例を作れたと感謝しています。

加藤:私が感じたのは熱量でした。危機感や熱意といったものは会社によってさまざまですが、ヤマハさんからは「変えなきゃいけない」という熱い想いを最初から感じました。我々は新しいものに挑戦し、未来に価値を提供するためにコア技術へ注力していますが、この規模ですからハイスピードに進めないと淘汰されてしまいます。そうして熱量を持って駆けずり回っているところですが、ヤマハさんは僕らと同じような熱量で歩調を合わせてくれる企業と感じていて、いま必死にお付き合いさせて頂いているところです。

正岡:ヤマハさんの姿勢は、AZAPAの若手社員にとっても良い刺激になりました。日本の産業構造ではOEMがひとつ上にあって、Tier1は言うことを聞くという上下関係があります。もし今回、ヤマハさんが上位からAZAPAを見下ろすような形で取り組まれたら、若手が萎縮してしまったかもしれません。しかし対等なパートナーとして見てくださり、若手が提案したことでもヤマハさんが受け入れてくれましたから、その若手にとっては自信になったでしょう。我々のように上役同士が熱い想いを共有することはできても、下の人間まで一緒になって取り組むことは難しいものです。それができたことは本当に良かったと思います。

大迫:熱い想いをもってらっしゃるということは、我々にとっても嬉しいことです。お互いに想いがあれば、相乗効果でどんどんモチベーションが上がっていくものです。ヤマハが仕事をする価値は、お客様に感動を届けたい、良い商品を届けたい。これは当然のことですが、それと同じように、我々も仕事を楽しみたいというモチベーションがあります。しかし、以前は「このままでは仕事を楽しめなくなってしまう」という危機感があり、それが熱量の源泉だったと思います。ただモノを作ればいい、あるサイクルに乗ればいいとは考えていません。楽しまないと意味がないと思っていますから。

加藤:仕事が面白いという話に便乗すると、AZAPAでは技術者を4段階に分類していまして、まず「エンジニア」はベーシックで、オペレーター的な部分も含みます。その次が設計者で「デザイナー」、その次が研究によって分からなかったことを明らかにして理論化する「サイエンティスト」。そしてAZAPAが目指すところにアート、「アーティスト」があります。「人々の生活を豊かにするために、どんな価値を提供すればいいか?社会課題の因果関係を紐解き、どんなアーキテクチャーを構築すれば、その価値を生み出していけるか?」のアーキテクチャー設計への挑戦です。今、我々はアーティストになりたいと思っているので、きっと大迫さんらも、同じような意識なのだろうなと思っています。

大迫:挑戦から生まれてくるプロフェッショナル、それが生み出すアート。こういうところを我々は見ていてワクワクするし、自分もこうありたいと感じますね。ただエンジニアリングを仕事にしているコンサル会社と違うのは、こういうところなのでしょう。

中川:ヤマハ発動機では長期ビジョンで「ART for Human Possibilities」というスローガンを掲げています。こちらのARTは頭文字による造語ですが、偶然にしては似ていますね(笑)。

一同:(笑)


―最後に、この先お互いに期待することを教えてください。

大迫:我々は強みを生かして、社会の変化にヤマハらしさをつなげながら、モビリティをどんどん進化させて変化・改革させていきたいと考えています。そして、お客様をワクワクさせ続けたい。これが長期ビジョンでも謳われていることです。そのためには、我々の仕事をますます進化させないといけせん。仕事の中身を変えて、いろいろなものを提供し続けないといけない。また、仕事のワザとしてプロセスや手法といったものも進化させるべきです。今のままでいいということは、絶対にありえません。そこで、御社の強みである計測やシミュレーション技術といったもので、一緒に進化させていって頂ければ、我々は、提供したいと考える価値を出し続け、そして挑戦し続けることができるはずです。価値を生み出し続けるためにはパートナーが必要であり、それは AZAPAさんだと思っています。

加藤:ヤマハさんのいうワクワクというものは、ヒトの「感性」のところですね。四輪業界は自動運転レベル4、5の社会に向けて、操る喜びなどの感性性能よりも、安全・快適といった方向に向かっていて、今後もかなりフォーカスされていくでしょう。多くの業界がその方向に向かいます。一方で二輪業界は、あらゆるモビリティの中でも、未来永劫、ユーザーに操る喜びを感じてもらうことで価値を提供していける唯一のモビリティだと思っています。「感性」についてはヤマハさんの中長期計画でもさまざまな新製品・新産業のなかで謳われていますが、その原点には二輪車がある。ワクワクという言葉を、現象別にワード化して、そのワードはまだ〇〇感といった定性ワードですので、技術者として特徴量となりうる物理量に置き直さなければならないです。そしてその物理量をコントロールできるメカ・エレキの制御因子に上手く分解、割付けながら、システムとしてどう実現するかをモデルベースで性能設計する。そういうシステムアーキテクトをプロセスに従って作り上げるということを、ヤマハさんと今後一緒にやっていきたいと思っています。

大迫:価値を一緒に考えていくということも大事ですね。

加藤:感性の定義を詳細化し、ライダーの感性に響く新たな価値を共に創造していきましょう。