AZAPA

THE MAGICIANS

「一人の天才よりも “組織” を育てたい」
~AZAPAエンジニアリング株式会社 代表取締役社長 井村 佳人インタビュー~


時代を切り拓くキーパーソンへのインタビュー、第9回はAZAPAエンジニアリング株式会社 代表取締役社長の井村 佳人。若手エンジニアから経営者として活躍していた彼が、AZAPAに参画したきっかけとは?さらに混迷を極める自動車業界で、AZAPAエンジニアリングが生き残るための戦略や組織論についても語ってもらった。

ベンチャーが少なかった名古屋での出会い



―井村社長が、AZAPAに参画されたのは何がきっかけだったのですか?

もともとエンジニアリング会社やSIerの経営をやっていて、近藤社長とは知り合いだったんです。名古屋って大企業が多くて、東京などに比べるとベンチャーが少ないんですね。それで経営者の年齢層も60代以上の方が多いので、若手同士のつながりで「いつか一緒にビジネスをやりたいね」とか、そんな話をしていました。それで僕が前の会社を退任して1年くらいたった時、近藤さんから「そろそろいいんじゃない?一緒にやろうよ」と声かけてくれて「じゃあ、やろうかな」と。2017年の11月なので、3年前ぐらいかな。


―AZAPAグループではここ最近、自動運転を含めた中小型モビリティの開発に力を入れている印象があります。

もともとAZAPAは2人乗り用の中小型車などを開発していたのですが、AZAPAエンジニアリングでは「クルマ」っていうくくりではなく、自動車よりもっと低速で走る「小型低速自動運転モビリティ」の開発に取り組んできました

ここ1年半で、そうした取り組みがたまたま「地方創生」や「地域活性化」という観点から重視されるようになってきたんです。AZAPAエンジニアリングの小型モビリティはいわゆるシニアカーなので、クルマをめぐる法律の規制から自由で実証実験もしやすい。だからこそ僕たちへの期待も大きいと感じていて、2023年には市販も予定しています。



(AZAPAエンジニアリングが開発を進めている「誰もが気軽に・安全に活用できる次世代の自動運転モビリティ」のデザイン。 シニアカーと同じ大きさで、最高速度は6km/h。免許不要で歩道を走ることができる。)


点と点をつなぐモビリティで、地域を見守る



―地方創生の流れが加速する中で、AZAPAエンジニアリングの技術が注目されたということですか?

そうですね。僕らは次世代の低速モビリティのターゲットとして、高齢者を想定しています。お年寄りって82~83歳ぐらいになると、免許を返納する方も多いですよね。それで自転車に乗れるうちはまだいいのですが、危ないので自転車もやめてしまうと、足腰が弱って500m先のバス停まで行くのも一苦労です。僕たちはそこまでの「つなぎ」になる乗り物というか、点と点を繋いであげるモビリティっていいよねと。そういう形で地域に寄り添った開発ができたらいいかなと思っています。

―お年寄りが「足代わり」に使えるようなモビリティですね。

そうですね。僕らは近い将来、そこに「見守り機能」も付けたいと考えています。たとえば都会で暮らしている息子さんや娘さんが、田舎の両親を心配して毎日電話をかけるのはお互い大変ですよね。でもシニアカーのコネクテッド機能を活用すれば、アプリ上でモビリティが動いているかどうかを毎日確認できる。今まで蓄積してきたAZAPAの技術で、地域のお年寄りを見守ることもできるんです




―超小型のモビリティが、次世代のモビリティの核となるという意識はもともとあったのですか?

AZAPAエンジニアリングは4つのプロジェクトを掲げていて、(1)将来に向けての子ども支援、(2)キャリア支援、(3)ベンチャー支援、そして(4)地域支援です。シニアカーのプロジェクトは「地域支援」の一環ですが、僕も大学時代の4年間を富山県で過ごしたので、地方がどういう状況なのかはなんとなく分かるんですね。

それで「どうすれば困っている人たちを助けられるだろう」と考えたとき、誰しもいつかは必ずお年寄りになるわけだから、そうなったときにすべての人が安心して自由にシームレスに移動できる社会が良いなと。その理想をめがけて取り組む中で、「低速自動運転の小型モビリティ」が生まれたんです。



(AZAPAエンジニアリングが掲げる4つのプロジェクト)



「クルマが欲しい人」はまだまだ大勢いる



―今、社会課題がどんどん変わっていく中で、自動車産業も変化の時期ですよね。

自動車産業は今「100年に一度の転換点」といわれていて、最終的にどうなるかは誰も分かりません。たとえば中国ではガソリン・ディーゼルが2035年で販売廃止の方向になりますが、この流れは全世界的なもので、僕らもそれに合わせて変化していく必要がある。そこから戦略を考えると、今開発している小型モビリティや自動運転、あとはMaaSのような新しい分野で「人が安心安全に移動できる世界」を少しずつ作っていき、どんどん事業化していきたいと考えています




―国内だけではなくて、世界のニーズを細かく取っていくと。

日本では新車の販売台数が減り続けていますが、世界で見ると「クルマが欲しい」っていう人たちはまだまだ大勢います。もちろん日本でも、地方の若者を中心に車が売れているのですが、人口がどんどん関東圏に集中していて、今や日本人の4割近くが関東圏に住んでいる。よって「都市部ではクルマが売れない=日本ではクルマが売れない」ということになるんですね。それに日本車ってすごく品質が良くて壊れないから、長持ちする。結果的に買い替え需要が減って、さらに国内の人口も長期的に見れば減少していくので、やはり日本における新車の需要はどんどん減っていくと思います。

僕は自動車メーカーに育てていただいたので、モビリティで社会還元するのが会社としての使命です。世界を見てみると、アメリカや欧州、中国では新たな自動車メーカーがどんどん出てきている。中国なんてすごいですよ。でも僕らが今までやってきた自動車の「制御」っていうくくりではまだまだ優位性が高いので、その優位性をもって全世界に価値を提供していきたいと思っています

今は世界中に顧客がいて、水素がいいとか電力がいいとか、エネルギーは何でも良いから低コストの車がいいとか、多種多様なニーズが国や地域によっても異なるので、それに合わせてクルマも形を変えていく必要があります。AZAPAエンジニアリングにとって、海外進出や自動運転の小型モビリティはそうした戦略のひとつです



(小型低速自動運転モビリティの資料を前に。このモビリティは法人向けに2023年、個人向けには2025年に販売を予定している)


「チーム」としてイノベーションを起こせる組織を



―今のお話とやや関連しますが、世界に目を向け、新しいことにどんどん取り組んでいく“MAGICIAN”であるためには、どのような意識が必要でしょうか。

AZAPAエンジニアリングという会社は、ひとりひとりの個が立っているというより、チームとしてイノベーションを起こしていける組織だと思っています。僕自身はMAGICIANでも何でもなくて、いうなれば「MAGICIANSとしてのチーム」みたいな組織を作りたい。天才的な技術者が何人いたとしても、マネジメント組織として完成していなければイノベーションは起こせません。だから個人はもちろんですが、「組織も育てる」というのを僕はすごく意識しています




―「組織を育てる」とはいい言葉ですね。

もちろん優秀なエンジニアにはこれからもたくさん来てほしいですし、しっかり育てます。ただ個人のスキルだけではなくて、プロジェクトやみんなと一緒にいるところを見て「ここが得意なんだな」と思ったらそのポイントを伸ばしてあげたり、組織のなかで教育することを常に意識しています。僕は結局、エンジニアが大好きなんです。




井村佳人(AZAPA エンジニアリング株式会社 代表取締役社長)


自動車エンジンECU設計に深く携わり、エンジニアリング会社社長、SIerの経営を経て、2017年11月にAZAPAエンジニアリングに参画。大手OEMメーカーに切り込み、新規事業、研究開発などを手掛ける。 エンジニアに寄り添いながら会社経営をするのがモットー。さらに社会活動も積極的に行い、世界の子供の教育や成長支援、奉仕活動にも取り組む。
(著書:エンジニアのための年収倍増計画/幻冬舎2015年9月)




本プロジェクト「THE MAGICIANS」は、AZAPA株式会社のカルチャーフィットプロジェクトとして2020年6月にスタートしました。コーディネーターは弊社CCO(Chief Culture Officer)のジェニア(Yevheniia Hrynchuk)、ライターは北条、カメラマンは槇野翔太で進めています。Instagramでは撮影の裏側も公開していますので、ぜひご覧ください。